髪の毛だらけの美容室

 

 ちょっと高めのレストランに行く前、友達の誕生パーティーに招かれる時、美容室に寄ってからー。「優雅なパリ」を想像してこれを実行すると、大変なことになります。美容室に行ったら、「毛だらけ」になって帰ってくることになるからです。

 

 私がよく行くのは3区のPinto Coiff。「近所の床屋さん」の風情ですが、内装は新しめ、女性客も多く訪れます。気のいいポルトガル人のご主人と、フランス人青年の2人で切り盛りしていて、土曜日ともなると近所の人でごった返し、社交場と化します。

 

 「Bonjour!」と言いながら、店に入ったらまずは握手をして美容師さんとあいさつ。どこにバカンスに行っただの、最近仕事が忙しいだの、ひとしきり話し込みます。当然その間、美容師さんの手はお留守。カットされていたお客さんは、我慢強く美容師さんの話が終わるのを待つことになります。

 

 「儀式」が終わったら、日本と同じようにまずシャンプー台に案内されます。二回シャンプーしたら(リンスはなし!)、鏡の前のカット用いすに座り、「この前みたいに」とか「ちょっと短めに」とか、注文。カットの間も、食事の時同様、喋り続けなければなりません。これが日本人にはちょっと苦痛。私の場合、フランス人青年が筋金入りの「ゲーマー」のため、日本のテレビゲーム事情を紹介したり、私がやっているフランス製ゲーム「Atlantis」の解き方を彼から教えてもらったり、結構有意義な時間ですが。

 

 さて、肝心のカットですが、恐ろしく時間が短い。特にポルトガル人のご主人は10分程度。日本人美容師のように、髪をそろえながら切るようなことはせず、いきなりガンガンと切っていきます。カットの間もカウンターに飛び散った髪の毛をドライヤーで飛ばしたり、なんともせわしない。

 

 カットが終わると、ドライヤーで髪を乾かして、あっと言う間に終了。いえ、カットだけでなく、全行程が20分程度で終了です。髪の毛はドライヤーで飛ばしておしまい。日本と同じように大きなビニール製のストールをまとい、首の回りには紙のような物を巻いて、服に髪の毛がつかないようにはしているのですが、なぜか終わった後はシャツにもズボンにも毛がびっしり。美容室の後は家に直行、着ていた服は即洗濯、シャワーを浴びると頭から切れ端の髪の毛が次々と・・・。

 

 それでもフランス人はいたって気にすることなく、毛だらけのまま、メトロの駅に直行したりします。フランス人女性は金髪が多いので、ほとんど目立ちませんが、黒髪の男性などは歴然。シャンゼリゼなどを歩いていても、よくよく見ると、深い二重の瞳の下に、短い髪の毛が何本かついたままになっているのを見かけたりします。

 

 パリの相場は、あくまで庶民の美容室の場合ですが、カットとブローで男性なら100−150フラン(1、500−2、300円)、女性で150−200フラン(2、300−3、000円)。レジで支払いを済ませ「A la prochaine fois!」と握手をして、髪の毛だらけになってパリの街に出ていきます。

 

             

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